Dungeness

デレク・ジャーマンが晩年を過ごした
海の近くの町ダンジネスに
さわくんに車で連れってってもらう。


デレク・ジャーマンの家の前の路肩に車を止めて
延々続く、赤い砂利の浜を歩いて海に向かった。


この日は、満月。
ドーバー海峡から上がってくる、真っ赤な満月は
ちょっと怖いぐらいの綺麗さだった。
間違いなくこの世だけど、彼岸の様な場所。


赤い満月と波と風の音と、場所の雰囲気に
『なんか怖いな。』と、つぶやくと
一緒に行ったデールが『怖いの?フフフ。』
って笑っていた。


さわくんは、黙々と満月や風景を動画で撮っていた。
その撮影の仕方や選択手法は写真家に近いと思った。
時には目で見えるより美しいハイファイな映像に感嘆する。
『別にハイファイ志向ではないよ。』という
彼の映像は、ハイファイも突き詰めていくと
生に近づくのか、と、強く感じさせるものだった。


もう多分、一生来る事のない風景をしっかり見て、写真を撮った。


デレク・ジャーマンは、なんであの町に住んだのかな、とか
考えても分からない事を、ぼんやり思いながら帰りの車に乗っていた。
日本に帰って、もう一度、作品を見てみよう。


ドライブスルーでマックを食べて帰った。